西アフリカからお送りする「エボラ」情報まとめ
渦中の西アフリカにいると、エボラ出血熱(以下エボラ)の情報が自然と耳の中に流れ込んできます。
自分の身を守るという意味でも、周りの人にちゃんと安全に暮らしてもらいたいという意味でも、
「エボラとは何なの?」という問いに対する答えを「3分で分かる図」(実際3分もかからない)にまとめてみました。
(冒頭のイラストはエボラに打ち勝つ特効薬開発を願ってのものです・・・。)
どうやら日本では・・・
- エボラはアフリカ中で蔓延している
- エボラは確実に死に至る病気
・・・と誤解している人も多いのではないのでしょうか?どのメディアを信じるかが大事ですね。
Source; CDC – Centers for Disease Control and Prevention, 2014 West Africa Ebola Outbreak – Wikipedia, Ebola virus desease – WHO
西アフリカから拡大するエボラ大流行2014の図
簡単すぎる3ステップで進んでいきましょう。
- エボラ拡大の経過
- エボラによる被害
- エボラの真実
このような順番で簡単に理解できるような図になっています。
English versions are available; Image and PDF
「エボラの致死率90%以上」というフレーズが使われることが多いようですが・・・
今回2014年のエボラアウトブレイク(大流行)から得られる統計でいくと、55-60%という数字に収まっています。
速報;ナイジェリアからUAEのアブダビへ渡ったナイジェリア人女性が同市内で死亡しました。彼女はエボラウィルスに感染していたとされています。エミレーツ航空の発表によると、35歳の女性は進行するガンを治療するためにインドへ向かう途中であったとのことです。(Source; Aol)
エボラが猛威を振るう西アフリカで強く感じる
警戒に越したことは無いですが、過剰に怯えるのは何だか嫌ですね。
実際、私が現在住んでいる場所はガーナ共和国で、いつエボラに感染しても不思議ではない地域です。
図解の地図を見ていただけると分かると思いますが、ガーナは、リベリアの隣の隣・・・・。
エボラの話題はしょっちゅう耳にします。
- ガーナのニュースから
- 日本の心ある人々から
とはいっても実は、ガーナ国内での話題よりも日本からの心配メールの方が多いのではないかと・・・感じています。
それだけ、日本では「盛大に」エボラの大流行を報じているということですね。
エボラ流行による日常生活の変化
Image background; flickr
西アフリカでエボラが流行することで、いくつかの変化を感じます。
これはここ西アフリカに居ないと気付かないことかもしれません。
- スーパーの消毒液が消えた?
- エボラを恐れつつも対策を講じない人々
- ラジオで繰り広げられるディスカッション
スーパーの消毒液が消えた?
Image; Science in Our World
「今からスーパーにサニタイザー(手の消毒液・ジェル)を買いに行くぞ!」
とガーナ人の友人に連れられスーパーへ行くと、いつもあるはずの場所に・・・それがない。
(Modern Ghanaは「ハンドサニタイザーの不足と値上がり」を報じています。)
さすがに、ガーナに住む人々は警戒しているのですね。
特にスーパーに買い物に来る人々は、外国人が多いので、その点も大きく影響しているかもしれません。
エボラを恐れつつも対策を講じない人々
Image; jhr
生活柄、地元のガーナ人と一緒に行動する事が多いのですが、彼らの意識には、非常に興味深いものがあります。
スマホやPCを使いこなしネットワークをフル活用して日々を生きるガーナ人もいれば、
汗水垂らして鉄の溶接に明け暮れるガーナ人もいます。
後者と話している時にある事に気がつきました。
それは、「エボラは相当警戒しているが、特に何もしていない」ということ。
「エボラは本当に怖くて、広範囲まで拡大していて」・・」と話をするものの、結局そこから先は無し。
これは、実は非常に共感することです。(日本人の私が同じような生活をしています。)
私の家も同じなのですが、井戸から水を汲む生活をしていると、こんな感情が湧いてきます。
「井戸に水を取りに行くのは面倒だから、今は手を洗わなくていいか。どうせすぐ汚れる。」
この感覚です。
家の近所でエボラの感染が始まったとしたら、かなり対策が難しいような気がしています・・・。
ラジオで繰り広げられるディスカッション
Image; Adventist World radio
私はガーナ人の家に居候しています。
朝6時になると大音量のラジオがかけられ、否が応でも目が覚めるものです。
普段流れているラジオ局は、Oman FM や Happy FM というもの。
英語が話されるときもあれば、現地語Twiが話されることも。
ある日、(どのラジオ局かは特定していないが)ラジオから気になるトピックが。
そのテーマは「エボラの脅威が広がる状況下で、屋台で食べること」について。
一人の男は、「ガーナのあらゆる場所で見られる不衛生な屋台で食べることは避けるべきだ!」と熱弁。
それに対して、もう一人の男が「それは誰しも分かっている事だが、所得が低い人にとっては仕方がないのだ!」と応戦。
ガーナ人特有の激しい口調で繰り広げられるディスカッションは、日本人の私からすると、喧嘩のようです・・・。
このラジオプログラムから感じるのは、衛生問題に対する意識の高まり。
今まで地元のラジオでは聞いたことの無い「熱の入り方」で、地元民の食にまつわる衛生問題が話し合われています。
そのセッション内では、エボラが「食事からは感染しない(汚染された肉との接触などを除いて)」という事実が語られることはありませんでした。
エボラを中心として、衛生問題についての意識が高まっているのと同時に、
エボラに関する正確な情報が不足している現状を強く感じています。
西アフリカにいるから手に入る情報?
エボラの危険が近くに迫っているからこそ、入ってくる情報は強く頭に残るものです。
さらにさらに、周りには情報通な方が多いお陰で、有益なニュースをもらいっぱなしです。
それでは、(情報を他サイトから参照しながら)興味深い話をいくつか紹介しましょう。
- 対症療法次第でエボラは治る?
- 女性の方がエボラにかかりやすい?
- 「奴らを信じてはいけない」という迷信
対症療法次第でエボラは治る?
Image; South China Morning Post
エボラはワクチンが存在しない病気だとされています。これは事実です。まだ有効なワクチンをつくり出すことには成功していません。
しかし、これが必ずしも、「感染したら確実に死ぬ」ことを意味している訳ではありません。
一番最初の図で示したように、死亡率は55-60%です。
※BBCでは、国毎のデータが示されています。
- ギニア;約73%
- リベリア;55%
- シエラレオネ;41%
「生きるか」「死亡してしまうのか」、生死を分けるのは、「どのような治療を受けるか」の違いなのです。
つまり、頭痛や吐き気、腹痛などの症状を抑える治療をするかしないかで大きな差が生まれてくるということですね。
Wikipediaでは、脱水症状を防ぐ治療が効果的だとされています。
女性の方がエボラに感染しやすい?
Image; Aol
女性の方がエボラに感染しやすい。そんな方程式が叫ばれる原因は、「女性の愛情」です。
科学的にこの事実を証明する調査はありません。しかし、非常に説得力のある物語がここにあります。
舞台はリベリア。
Kona Kupeeという名の36歳の女性。彼女は愛する夫をエボラで失いました。
夫が存命中は、彼女が必死で看病を続けたのです。
出血という症状は見られなかったものの、エボラを疑う日々でした。
看病の間に、当然体に触れ、体を洗い・・・。常に感染の可能性に晒されています。
女性がエボラに感染しやすい理由はここにあります。
病気の人を看病し、面倒を見る役目は、愛情溢れる女性に託されるという文化です。
リベリア政府(The Ministry of Health & Social Welfare)は彼らが調査したうち「エボラで死亡した人の75%は女性であった」と述べています。
女性の愛情がかえって、エボラの感染リスクを高めている可能性があるということですね。皮肉なものです。
「奴らを信じてはいけない」という迷信
Image; Reuter
西アフリカの国々でエボラが流行する一つの大きな原因。
それは、「治療に対する敵対心」です。
治療を受ける事に全く有益性を感じていないということ。
エボラ大流行の発信地となったギニアから、その南に位置するシエラレオネまで、
病院に行くことが「死の宣告」を意味するとし逃亡を図る患者が続出しています。
ギニアのフォレストリージョン南東部の村は、
道路を封鎖し、橋を下ろし、医療関係者の立ち入りを断絶。
リベリアのロファ群にある国境付近にて、2つのコミュニティのエボラ感染検査を試みた医師が、
サーベル、ナイフなどで武装した地元民によって追い払われる事態。
ロイターのインタビューに匿名で答えた魚の売買をするシエラレオネ人によると、
「病院に行くと、そこから二度と出ることは出来ない」と信じる人が大勢いるとのことです。
一方、ギニアの北部テリメレでは、医療を信じた多くの患者は病院にかけこみました。
その結果、75%という驚異的なエボラからの回復率を記録しています。
一刻も早いエボラ感染拡大の終結を願って
随時、エボラにまつわる大事な話、体験に出会うたびに、このページを更新していきます。
エボラに関する正しい知識が広まり、この異常事態の収束に繋がる「流れの一部」になれれば幸いです。
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~Shunya Ohiraさま
大変興味深く拝見しました。日本では大手メディアの報道はあってもなかなか現地の人の情報に接する機会がありません。更なる情報を期待しています。(環境問題研究家)
Segawaさま
コメント頂きまして、有難う御座います。今回のエボラ騒動で、たまたま自分が現場近くに居たということで、知り得る情報をベースに、調査を加えて記事にさせて頂きました。ご興味を持って頂けて嬉しい限りです。微力ながら、偶然居合わせた個人に出来る役目を果たして参ります。
Shunya Ohira
日本では現地の情報が不足しています。情報をどんどん出すようお願いします。
瀬川久志