未知の生物と聞くと、なんだかワクワクしてきませんか?
私も【新種の生き物】【知られざる秘密】というワードにはついつい反応してしまいます。
私たちの住む地球で、たくさんの生物が発見され研究されてきましたが、とはいってもそれは地球の中で生きているすべての生き物の中のほんの一片だけなのかもしれません。まだまだ人間が発見できていない場所、到達できていない土地はあります。
その一つが深海。深海にすむ魚たちは不思議が詰まっています!
今回は摩訶不思議な深海魚たちにスポットを当てていきましょう。
コンテンツ
深海魚の定義とは?
深海魚とは水深200mより深い水域に住んでいる魚のことをまとめて定義されています。
現在2000種以上の魚が深海魚に該当するとされていますが、一口に深海魚と言っても、そのタイプは大きく2つに分類されます。
①海底で暮らす底生性深海魚
②中層を漂って生活する遊泳性深海魚。
その割合はほぼ半分ずつ分かれています。
深海とは?
そもそも深海は4つの深さで区別されています。
水深200~1000mが中深層。1,000 – 3,000m漸深層。深海層3000~6000m。6000m以上は超深海層となっています。
当然のことですが、深くなればなるほど、光は届きにくくなり水圧も増し生き物が生きるには過酷な環境となります。
超深海層はまだまだ知られていないことが多く、未知な分野。
もしかしたら私たちの想像をはるかに超える生き物が、眠っているかもしれません。ロマンです!
1. 黒の中の黒い魚

私たちの瞳は、恐ろしく精巧に作られています。幾百万という色を、人間は見分けることができるのです。
さて、その中でも黒という色に注目してみましょう。黒のなかでも、さらに黒い黒。どういう色か想像できますか?
その答えになる魚が、深海に存在します。
スーパーブラックフィッシュという、名前からして真っ黒な魚が水深3000mに生息しているのです。
ダイニチホシエソやムラサキホシエソなどが分類されるようです。
色を識別できる原理
そもそも私たちが色を識別する理由は、光が物体にあたり、光の反射を目でとらえ脳が認識し「これは何色だ」と決めています。
物体そのものが発光し、色を放っているわけではないので「光」「物体」「目(脳)」この3つは必須というわけです。
そのため、物体に反射して目に届く光が少なければ少ないほど、真の黒に近づいていきます。
黒い魚の皮膚の秘密
それを踏まえたうえで、スーパーブラックフィッシュを見てみましょう。
この魚が最も黒い魚と呼ばれる秘密は、彼らの皮膚にありました。
魚たちは皮膚の複雑なナノ構造で光をキャッチし、自分たちの体に当たった光をほぼすべて吸収しているというのです!
皮膚が単純だと、すぐに光は反射して位置が特定されてしまいますが、彼らの皮膚の構造は恐ろしく複雑で、光が跳ね返る隙がありません。光の吸収率が99.9%に達しているものもいるようです。
このあまりの光の吸収率に驚いた人たちは、この魚を【深海のブラックホール】と呼びました。
この構造を利用して、カメラや望遠鏡、ソーラーパネルに利用できないかと考えている科学者もるようで、今後の文明の発展のヒントになりうるかもしれません。
この機能が必要な理由
ここまでなぜ黒くならなければいけなかったのでしょうか。
その理由は、深海で生き残るため。食べられないためです。
深海には生き物がとても少ないため、エサを探すのは一苦労です。そのため、あらゆる生き物が捕食の対象になってしまいます。
深海といえども、少なくとも1000mまではごくわずかに光が差し込みます。
しかしその一筋のひかりが、生きるか死ぬかを決める要因ともなりえます。それで彼らは体を黒くすることによって身を守るのです。
2. 水深7000mに生息する超深海魚!

マリアナ海溝という場所をご存じでしょうか。マリアナ諸島の東に位置するこの海溝ですが世界で一番深い海溝として、学生時代覚えた人も多いかもしれません。
海溝の深さは何度か計測されていますが、最新の記録では10911mという恐るべき記録をたたき出しています。
世界一高いエベレストを逆さにして突っ込んだとしても、まだまだ余裕があるというのだから、もう参りましたとしかいようがない深さです。
しかし人間が恐怖を感じるこの場所で、静かに生き続けている魚がいます。
体長30㎝ほどのマリアナスネイルフィッシュ(シンカイクサウオの仲間)という半透明の白い魚です。

弱そうなのに恐るべき能力
透明でぶよぶよした体は一見弱そうに見えますが、実はとてもタフな魚です。
深海6000~8000mに生息するというこの魚は、恐るべき深海の水圧に勝利しているのです。
水圧は10m潜るごとに1気圧ずつ増えていくものです。
例えば深海6500mだとしたら、指先(1㎠だとした場合)に650キロの重りをのせることになります。もう想像しただけで指が折れることは確定ですね。しかし1㎠でこの水圧なのですから、体長30㎝の体にかかる水圧はどれほどのものでしょうか。
なんとも恐ろしい魚です!
隙間という見えない装備
ただの魚が、特別な装備もなく潰れずに生きていけるのでしょうか。
そのカギを握るワードは【隙間】にあるようです。ある論文著者の話によると、マリアナスネイルフィッシュの頭の骨には隙間があり、これが体内と体外の圧力のバランスを取っているのかもしれないという仮説が立っています。
さらに、他の骨にも秘密が隠されていました。
魚の骨は通常固いものですが、この魚に関しては骨の大部分が軟骨として変異しています。
一部の骨は固く、他の部分は柔らかいという絶妙なバランスによって、凄まじい水圧にも負けずに生きていけるようです。
3. 極力省エネで生きようとする魚

ぷっくりとしたかわいい見た目が人気のフサアンコウを紹介しましょう。
水深90mから2,000mにかけてを生息範囲とし、体長は最大のもので30㎝。ピンクやオレンジいろのぷよぷよしたかわいらしい見た目で水族館でも人気があります。
隠れた足で海底散歩
いうまでもなく、彼らのずんぐりとした姿は素早く泳ぐことに適しません。それでエサを捕るときも、ひたすらじっとして来たものを飲み込む受け身型です。
さらにさらに、泳ぐよりも歩いたほうが早いのか、胸ビレと腹ビレを使って海底を“歩行”することも確認されています。短距離なら歩いたほうがエネルギー効率がいいとのこと。どこまでも私たちがイメージする【魚】とは真逆をいく生き物です。
フサアンコウの姿をよく観察すると、本当に魚に足が生えているように見えます。この姿から、実は海のヒキガエルという異名も持っているほどです。
徹底的な省エネモード

しかし彼らのすごさは歩行するだけではありません。エネルギーをとことん使わないということに関して、魚類一考えぬいて生きていているのは彼らかもしれません。
エサが少ない深海で、いかにして省エネモードで生きていけるのでしょうか。
【そうだ、息をするのをやめればいいんだ】
この答えに行きついたからなのかどうかはわかりませんが、ともかく彼らは息を止める潜水のプロになったのです。
フサアンコウは大きく口を開けて海水をとりこみ、水に含まれた酸素を使って最大4分息を止めることができます。
ほかのどの魚も使っていない画期的方法です。とはいえ、ここまで究極の省エネは人類には真似できませんね。
4. 深海にさす一筋の光をつかって発光するサメ

光がとどめの一撃になる魚もいれば、希望の光になる魚もいるのが深海の面白く不思議な世界。
水深500~600mの岩陰に住み、一生を終えるサメに注目してみましょう。
赤褐色でその名の通り美しい鎖のような模様をもつサメがいます。クサリトラザメという50センチほどの小型のサメです。
彼らは普段深海にすんでいるサメの種類ではありませんが、2005年8月にメキシコ湾の深度550mの海底で、蛍光に光る個体が観察されたということで、この深海にすむクサリトラザメに注目です。
発光サメの肌と目がすごい!

このサメが生息する深海には、ほんの少しの光しか届きません。さらに届くのは光の波長が一番長い青色の光だけ。
しかしクサリトラザメはこのわずかな光を逃しません。
かすかな青色の光を吸収し、緑色に発光させるという特殊な色素がサメの肌には備わっているのです。
さらにサメの目にも秘密があります。
実のところ、深海に潜ってクサリトラザメを見つけたとしても、人間の目でとらえることはできません。光が少なすぎるのです。
しかし、このサメの目はわずかな光でも物体を捕らえることができる能力が備わっており、サメの見ている世界は青と緑の二色のみ識別することができます。サメの見ている世界と人間の見ている世界には大きな差があるというわけです。

それで研究者たちは、このサメの視覚を疑似体験できるカメラを作成し深海へもぐることにしました。カメラを通してクサリトラザメをみてみると、見事に蛍光緑に発光していることが観察できたのです。
なぜ光る必要があるのか
残念なことにその理由は、まだ解明されていません。
それでも、クサリトラザメのオスとメスでは発光の仕方が違うという研究結果がわかっているので推測することはできるようです。
このサメには明るい蛍光と暗い蛍光に光る部分が、交互に並んでいる特徴があります。しかしこのオスにはそれぞれ見た目の違いがあり、オスは斑点なく交尾器が光り、メスは網状の模様がはっきりしているという特徴があります。
現段階では憶測でしかありませんが、最有力候補となる説明としては、蛍光発光によって交尾相手が見つかりやすくなるということがあげられます。
他の深海にすむ生き物の目には、この蛍光色はどのように映っているのか。それともそもそも映っていないのかという疑問も残ります。これから解明が進んでいくと、さらに驚くべき秘密が明らかになってきそうです。
5. 海に住む異能力者登場

最後に海の異能力といわれるヌタウナギを紹介しましょう。
ヌタウナギは日本も含め、世界のいたるところに分布しています。現在80種が確認されており、生息水域も10~210mと幅があります。
名前に「ウナギ」とついてはいるものの似ているのはその細長い姿だけ。知れば知るほど、若干のホラー生物なので心してみていただきたいところです。
心臓が一つとは限らない

生き物に心臓は何個あるでしょう。基本はもちろん1つです。
でもヌタウナギに心臓は複数個存在するのです!そしてこの心臓たち、なんと酸素がなくても何時間も生きていられるというタフさ。
目は退化し、見た目もグロテスクな彼らですが、それと引き換えにすごい能力を獲得している魚です。
敵が来たらスライムで攻撃

ヌタウナギの名前にもついている「ヌタ」とは、皮膚からたくさんの粘液が出て体がぬるぬるすることに由来しています。
ヌタウナギを捕まえて、それを持っていようものなら数秒後、あなたは悲惨なことになるでしょう。
ぬるぬるというよりスライムがどんどん、あふれてくるイメージです。なんと一秒で960mlの粘液を放出します!
このゲル状の粘液は最強の防御力を誇ります。もしほかの魚が、ヌタウナギを食べようと噛みついた場合、即座にこの粘液がエラにつまり呼吸できずに死んでしまうことも。かれらにちょっかいをかけると、倍返しどころか100倍返しになってくるわけです。
脱出芸の達人
ヌタウナギの細い体は、敵から攻撃されたときに役立ちます。
自分の体に結び目を作り、結び目を少しずつずらしていくことで脱出するのです。
さらにヌタウナギの皮膚にも注目しましょう。
本来、皮膚と体はぴったりとくっついているものですがヌタウナギはそうではありません。
その隙間を利用して、血液を溜めたり流したりできるのです。
この能力を利用すれば、ヌタウナギは自身の太さの半分のサイズの穴も通り抜けられるというのだから、驚きです!
さいごに
たった5種類の深海魚だけでも、語り尽くせない魅力や不思議がまだまだあります。
人類の文明や科学はずいぶん進歩してきましたが、まだまだ深海という領域は秘密がたくさんありそうです!
新種の魚や生き物。もしかするとファンタジーに出てくるような生物が、発見されるかもしれないという楽しみがあるのは喜ばしいことですね。
深海、数ある海溝。さらに世界一深い海マリアナ海溝。
深さ10000mを超えた調査によって、さらに新たな世界を見せてくれることを期待しています。
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