今回は、「irony」と「sarcasm」の違いです。どちらも「皮肉」という訳語が当てられがちですが、どちらも同じなのでしょうか?実は、この2つの言葉の間には大事な違いがあります。早速見てみましょう。
「irony」と「sarcasm」の意味の違い
どちらもよく似ています。ですので、英語で、英語話者のために書かれた説明を参考にしましょう。Bryson’s Dictionary of Troublesome Words…によると、以下の通りです。
Irony is the use of words to convey a contradiction between the literal and intended meanings.
日本語にすると「“irony”は、文字通りの意味と意図される意味の間の矛盾を伝えるために、言葉を使用すること」です。
そして、「sarcasm」については以下の通りです。
Sarcasm is very like irony except that it is more stinging.
日本語にすると「“sarcasm”は、それがより辛辣であることを除いて、“irony”に類似する」とのことです。
つまり、両者の間には、態度の違いがあります。辛辣であるかどうか。
「irony」と「sarcasm」の態度の違い
態度の違いについては、以下のように説明されています。
Whereas the primary intent behind irony is to amuse, with sarcasm it is to wound or score points.
日本語では「“irony”の背後にある主な目的は人を楽しませることであり、一方で、“sarcasm”は人を傷つけたり、出し抜いたり、感心させようとしたりすること」ということです。
このように、両者の間には明らかな違いがありますね。一方は、楽しさのためのもの。もう一方は、より攻撃的であったり、狡猾であったりするもの。だからこそ、この2つの言葉を混同しないようにしましょう。
両者の大事な違い
有名な『ironic』という歌の大間違いについて
せっかくなので、かの有名なアラニス・モリセットという歌手の大ヒットソング『ironic』にも触れておきましょう。実は、この曲、タイトルが『ironic』なのに、歌手に登場する「ironic」の使い方が全部間違っているのです。恐怖ですね。
よく聞くのですが(妻が歌うことが多い)、耳にするたびに「ん?」と思っていました。そして今回調べてみると、やっぱりそうでした。その中身をご紹介します。
A traffic jam when you’re already late
A no-smoking sign on your cigarette break
It’s like ten thousand spoons when all you need is a knife
日本語にすると、以下の通りです。
- 遅れている時に巻き込まれる交通渋滞
- たばこ休憩をとったのに禁煙の看板が
- ナイフが欲しい時に、スプーンなら1万本くらいある
その後「And isn’t it ironic… don’t you think?(皮肉だと思いません?)」と続きます。こう問われたら、もう答えは一つですね。「NO」です。皮肉だとは思いません。ただの、かわいそうな状況です。
歌詞には、このように彼女の考える「皮肉」な例がたくさん出てくるのですが、そのどれもが「まあ、かわいそうだよね」というもので、決して皮肉なものではありません。
歌に「ironic」という名前をつけて、そうと思われる例を列挙して、その全てが実は「ironic」ではないという全体的な状況が「ironic」です。そのような意味では、ひょっとすると、彼女はものすごい天才なのかもしれません(←「sarcasm」)。
もちろん彼女をせめるつもりはありません。歌自体は素敵ですので、お時間がありましたらお聴き下さい。
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