今回は、「切腹」という言葉を英語でどのように表現するのか、という話です。このテーマを選んだ理由は、色々な英単語の意味を(できるだけ深く)調べていた時に、この「切腹」という日本語が登場したからです。
きっかけになったのは…「disembowel」という英単語でした。真相は以下をご覧ください。
1. 「disembowel」を考える
なかなか「切腹」と「disembowel」をくっつけて考える人はいないかもしれません。しかしながら、興味深いポイントなので、まずはこれに迫りましょう。
英語で、リベリア(西アフリカのある国)の歴史について読んでいた時に、この「disembowel」という単語に出くわしました。意味はというと「~から臓器(胃、腸など)を取り除く」という、恐ろしいものです。(どんな残忍な国なのか…という印象を植えつけてしまったらごめんなさい!)
そんな「disembowel」がどのような文脈で使われるのか、と調べていた時に、偶然にも、Wikipediaの「disembowelment」で「切腹」という説明が出てきました。そして「切腹のことを、英語では、こういう言い方で表現できるのか」と感心したわけです。
2. そもそも「切腹」は英語で何?
一度、「そもそもの話」をしましょう。「切腹」を英語で言いたい時には、どう言えばいいのか。実は…そのままの発音が英語になっています。そう「seppuku」です。妻が外国人なので試しに聞いてみましたが「seppukuという言葉は、普通に、みんな知ってるでしょ」という反応でした。さらに「harakiri」という英語(もはや英語)も使われています。
それどころか「harakiri」(hara-kiriも同様)は、英語圏では「(単に)自殺」の意味で使われているようです。ある言語から別の言語へと移動した際に、意味の範囲が変わってしまうという、よくあるやつですね。ここで補足として、触れておきたいことがあります。「harakiri」という言葉は、英語として、十分に確立されているようですが、日本人からすれば「ハラキリ」には茶化したような意味合いが感じられる、という言及をこちらの本で見かけました。
これについては、私も同感です。このような理由で、あまり「harakiri」という言葉の普及を喜べない(というか賛成できないというか)気持ちです。
3. なぜ「cut」を使わないのか
「切腹は“腹を切る”行為だから、“cut the stomach”とかじゃダメなの?」という方もいるかもしれません。色々と調べる中で「cut」で説明するしかないかも…という意見も目にしましたが、私の個人的な意見では、これでは本当の意味での切腹が伝わらない気がしています。
ここで、最初に話を戻しましょう。今回「切腹」について考えるきっかけとなった英単語です。そう「disembowlment」です。私は、確実にこちらの方が「cut: 切る」(またはstab: 刺す)よりも、本当の意味での「切腹」に近いような気がしています。
「[名詞] disembowlment」の辞書での意味は、先ほどもご紹介したように「 腸などを取り出すこと」という風になります。実際に「切腹」は決して、腹部に手を突っ込んで中身を取り出す行為ではありません。
ですが、かといって「cut」のように皮膚を切ることを目的としている訳でもありません。むしろ、その目的は、臓器の部分を一刀両断して、栄誉ある(少なくとも、当時の人の間では、そのような認識)死を遂げることです。そのような意味で「臓器に対して直接働きかけることで、自らを殺める」という意味では「disembowlment」は的を射ているのではないでしょうか。
4. まとめ
- 「切腹」は既に「seppuku」や「harakiri」として英語になっている(sushi/寿司やtsunami/津波などと同様)
- それでも個人的には「harakiri」という言葉には、気持ちの悪さ(おちょくったようなニュアンス)を感じる
- 上記のような言葉が伝わらない場合には「cut」などの安易な言葉を使うのではなく「disembowlment」で説明する方が、本来の意味に近いと思われる
- (そして補足として…)「単に自殺でしょ」という解釈を外国の方にされる可能性があるので、ちゃんと(その当時は)それが栄誉ある行いであったと、説明を加えることも忘れずに
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