ハチクマという動物をご存じでしょうか?
その名前を聞いて想像するのは、大人気キャラクターの黄色いクマかもしれません。
でも実はハチクマは熊ではありません。
立派な鳥です。
ハチクマってどんな鳥?なんでそんな名前?何を食べて生きているの?
知れば知るほど「へぇ~」があふれてくる鳥を、余すところなくご紹介いたします。
1. ハチクマは渡り鳥の一種
ハチクマは鷹の仲間で渡りをする鳥です。
ハチクマの体長はオス約57cm、メス約61cm。
翼を広げると121~135cmとなり、鳶(トビ)と同じくらいか少し小さい大きさです。
アジア大陸東部やインドネシアなどで繁殖し、寒い冬がやってくる前に南へ渡っていきます。
日本では初夏にやってきて、9月ごろには渡ってしまうという、なかなか忙しい旅行スケジュールです。
多くは九州地方で過ごしますが、北上するハチクマも観察されているので、生息地は日本全域に及ぶと言ってよいでしょう。
鷹と鷲と鳶の違い
見た目もかなり似ているので、どのように見分ければいいのか少し困ってしまいます。
正直なところ、これ!といえる大きな違いはありません。
あえていうなら体の【大きさ】で区別しているということです。
以下が大きさの目安と言われています。
鷲:全長約80~100㎝
鷹:全長約45~70㎝
鳶:全長約60㎝
しかし種類によっては例外もあるため、大きさだけでは測れないというのが本当のところです。
とはいえ、基本的にはすべて仲間で大きさによって変わってくるということを押さえておけばOKでしょう。
ハチクマの姿はバリエーション豊か
ハチクマと呼ばれる鳥の見た目は、驚くほどバリエーションに富んでいます。
まず瞳の色に注目してみましょう。オスのクマタカの瞳は真っ黒ですが、メスの目の色は綺麗な黄色をしています。
また雌雄の違いだけでなく個体によって、色の違いや柄の入り方が違うため、特徴を知らなければ別の鳥だと思ってしまうほど違いがあります。
黒と白が混ざったもの、全体が茶色のもの、白が勝ったものなどなど豊富な種類がそろっています。
あなたはどの組み合わせがお好きですか?
ハチクマの鳴き声
ハチクマの鳴き声は、透き通った高い鳴き声が印象的です。
大自然の森の中でぜひとも聞きたい。そんな魅力的な鳴き声です。
私たちにとっては美しい鳴き声でも、彼らにとっては立派なコミュニケーションツールです。
後で詳しくお伝えしますが、ハチクマの狩りはチームで行うことがあります。
そのためこの高い鳴き声は、仲間に狩りの指示を飛ばすことや、狩りを終えた後ヒナを呼んだりと、いろいろな使い分けがされています。
2. 名前の由来
さて気になる名前の由来です。
このかわいらしい名前はどのように付けられたのでしょうか。
予想通り、ハチクマを漢字で表すと「蜂熊」と書きます。某有名キャラクターしか頭をよぎりませんね・・・!
しかしこの名前の通り、ハチクマは鳥でありながら蜂を主食とするのです。
そして出てきた熊という漢字ですが、ハチクマによく似た鳥にクマタカという鳥がいます。
クマタカに姿がよく似ていることから「クマ」
蜂をたべることから「ハチ」
これら二つが合わさって、この鳥は「ハチクマ」と名付けられました。
クマタカはどんな鳥?
名前の由来にもなった、クマタカについても触れておきましょう。
クマタカは日本をはじめインドネシアや台湾などに生息する大型の鷹です。
日本では鷹狩にも使われていました。
クマタカは森に生息し、狙った獲物に狙いを定めると、まっすぐ加速しながら飛んでいきます。
森林に暮らす猛禽類として、ヒエラルキーの頂点にいるクマタカは「森の王者」とも呼ばれています。
3. スズメバチも逃げ出すハチクマという鳥
昆虫の中で最強と言われるスズメバチ。
強力な顎と猛烈な毒によって、昆虫や動物、そして人間も恐れる昆虫です。
このスズメバチをあえて、自分の食事メニューに選んでしまうのがハチクマです。
地中に埋まった攻撃的なクロスズメバチの巣を掘り起こしたり、高い木の上に作られた巨大なスズメバチの巣を攻撃したり、ハチクマは恐れず向かっていきます。
まるで怖いものなしです。
ハチクマが食べるのは、成虫の蜂ではなく巣にいる幼虫やさなぎたち。
彼らは細長いくちばしと、長いかぎ爪をつかって器用に巣から幼虫たちをえぐり出します。
スズメバチの巣は大きいので、一度攻略してしまえばハチクマはお腹いっぱい食べられます。
例えるならば、ビュッフェスタイルのレストランのよう。食べ放題です。
一般的な鷹はこれほど細いくちばしは持っていません。
まさにスズメバチ専用の、フォークとナイフを兼ね備えているかのようです。
スズメバチにとって、ハチクマはまさに天敵と言えます。
スズメバチを狙う理由は渡りが関係していた
ハチクマの忙しい渡りスケジュールを、初めにざっくりご紹介しましたがもう一度振り返ってみましょう。
彼らが渡りをするのが初夏の5月ごろ。その間に繁殖し9月には再び渡りが始まります。
この約4か月の間に卵を産み、ヒナを育て、渡りに耐えうる力を備えさせなければいけません。
思いのほか時間がありません。
そこでハチクマはこう考えました。
「栄養満点のご飯をあげれば、早く大きくなる!」
実際こう思っているのかはわかりませんが、ハチクマがヒナの成長スピードを上げるためにスズメバチの巣を攻撃して幼虫を与えていると一般的に考えられています。
幼虫やさなぎは、ハチクマにとって栄養満点!
大変な狩りだとしても、長距離の渡りのためにスズメバチの巣の攻略はハチクマにとって必須事項なのです。
4. スズメバチに刺されても大丈夫!?
日本一の殺人生物と恐れられているスズメバチ。
毎年何人もの方が、スズメバチに刺され命を落としています。
こんな恐ろしい昆虫の巣を襲ったら、無事でいられるはずがありません。
防護服もないハチクマに、スズメバチの巣攻略はなぜ可能なのでしょうか?
実はハチクマの羽は、スズメバチの強力な毒針から身を守ってくれるのです。
ハチクマの顔の周りには、細かい羽毛が密集し固くなっているため、蜂からの素早い攻撃も振り払うことが出来ます。
さらにもう一つハチクマはすごい武器を持っています。
それはフェロモン。
ハチクマの出すフェロモンによって、初めのうちは攻撃的だったスズメバチが次第にあきらめたように動きが鈍くなるという現象が目撃されています。
しかしながらこの理由についてはあくまで仮説でしかなく、立証されていません。
これから研究が進んでいくと、さらに詳しいことがわかっていくだろうと期待されています。
5. ハチクマは平和主義者
自然社会は厳しいものです。
弱者は強者に負け、縄張りやエサも横取りされてしまいます。
しかしそんな中、ハチクマはとても平和主義者です。
彼らはエサを独占することはなく、ほとんど争わないといわれています。
NHK「ダーウィンが来た」というドキュメンタリー番組では、一つの巨大な巣を15羽以上のハチクマが攻撃し1カ月かけて攻略している様子が放送されました。
脚が折れてしまったハチクマも、仲間が狩ってくれた巣のおこぼれにありついて生き抜く様は、ハチクマの平和主義を印象付けるものでした。
おいしいものはみんなで分け合う。素晴らしい精神をハチクマから学べます。
6. ペットとして飼うことは可能?
さてスズメバチをも食べてしまう強者、ハチクマですが実際にペットとして飼うことは可能なのでしょうか?
結論から言いますと、ほぼ不可能です。
ハチクマは野生動物のため、ペットとして売られることはまずありません。
では自分で森に行って捕獲しようという場合でも、野鳥は鳥獣保護法によって守られているため、もちろん捕獲は法律違反になります。
捕獲が認められるのは以下の2点だけ。
- 狩猟制度に基づき、狩猟鳥獣を捕獲する場合
- 学術研究の目的などで、法による許可を受けた場合
しかしハチクマは狩猟鳥獣ではありませんし、ペットにしたいという理由では間違いなく許可は下りないでしょう。
これを破った場合、密漁となり厳重な罰則が科せられます。
なによりハチクマのためを思うのなら、広い空を自由に羽ばたかせてあげるのが一番でしょう。
7. 動物園でも姿を見られる
残念ながらペットにはできないハチクマですが、国内の2つの動物園でその姿を観察することが出来ます。
ハチクマという強く、そして特殊能力を持っている鳥を観察しに行ってみましょう!
ハチクマを見に行こう①盛岡市動物公園
●開園時間
午前9時30分から午後4時30分
●休園日
休園期間:12月2日~5月31日(予定)※工事のため長期間の休園があるようです。
●住所
〒020-0803
岩手県盛岡市新庄字下八木田60-18
●入園料
大人(高校生以上):500円
中学生以下、65歳以上の盛岡市民:無料
ハチクマを見に行こう②多摩動物園
●開園時間
9時30分~17時(入園および入園券・年間パスポートの販売は16時まで)
●休園日
水曜日(水曜日が国民の祝日や振替休日、都民の日の場合は、その翌日が休園日)
年末年始(12月29日~翌年1月1日)
●住所
〒191-0042
東京都日野市程久保7-1-1
●入園料
一般 600円
中学生 200円
65歳以上 300円
※各種割引があるようです。
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