私たちの周りに動物はあふれています。
小さなネズミや猫、忠実な犬。森には猿やシカがいて、海にはイルカやクジラたちがゆったりと泳いでいます。
しかしひとたび視点を変えると、実は私たちの知らないところで動物たちは助けをまっているかもしれません。
その声にいち早く気づき、動物たちを救うために全力で働く人々を忘れるべきではありません。
あらゆる動物たちの救急隊が、世界中にはたくさん存在し熱心に活動しています
彼らの語り尽くせない素晴らしい働きを、今回はほんの一部ですがご紹介します。もしかすると、あなたもその一人になれるかもしれませんよ。
1. 希少動物を守る!
ペットに癒しを求める人は多いようです。
愛くるしいまんまるな目で、両手を広げれば収まってしまうサイズ感。そしてのんびり動くその姿で、日本でも一時期ブームとなった動物も、いまや絶滅が懸念されています。
その名はスローロリス。
インドネシアでは密輸のためにスローロリスが違法に捕獲される事件が絶えません。
近年でもインドネシア、ジャワ島西部のバンドンで、ジャワスローロリスが保護され、森に帰されました。
保護したのは、動物保護団体インターナショナル・アニマル・レスキューで、保護したスローロリスの数はなんと20匹!
ジャワスローロリスは近いうちに絶滅してしまう可能性が危惧されているにもかかわらず、一部の人たちの間でエチゾチック・アニマルをペットとして人気があるため、闇取引が絶えないのが現状です。
さてペットとして飼われていた彼らをを、いきなり元いた森に放つわけにはいきません。ジャングルには蛇やタカなど捕食者たちがたくさんいるからです。
そこで、徐々に自然環境に慣れさせるため、いくつかのステップを踏んで野生に帰す取り組みがなされています。
飼い主から引き取られたスローロリスは健康診断とリハビリを経たのち、野生の生息環境に適応するために、保護林の囲いのある森の中で暮らしています。ゆっくりと時間をかけて、自立できるように愛をこめて保護活動を行っている様子に胸が熱くなります。
一日でも早く、20匹のスローロリスたちが生まれ故郷の森に帰れるように願っています。
2. 自分に危険が及んでも守りたい命がある
野生動物の脅威となるものは、天候、環境、餌場の減少など多岐にわたります。
そのなかでも、特に厄介で有害なものは人災です。
2019年、一つの裁判が決着しました。
アメリカ最大級のトラの繁殖施設を運営し、観光客を呼び集めていた「タイガーキング」と呼ばれる男性です。
本名をジョゼフ・マルドナド=パッセージという彼は違法にトラを売買したり、観光客用に写真を撮るためトラの赤ちゃんを産ませ、いらなくなったら処分するなど本当にひどい虐待を繰り返していました。
彼の蛮行を知っていたフロリダの「ビッグキャット・レスキュー」という保護施設の創設者キャロル・バスキン氏は、自身の「911 アニマル・アビュース(動物虐待)」というウェブサイトに、真実を書きだし抗議していました。
真実を暴かれ、商売にも影響を及ぼした彼女を憎んだタイガーキングはキャロル氏を殺すために、2人の暗殺者に依頼しようとしていたことも明らかになりました。
当然のことながらこの裁判は、タイガーキングに懲役22年の判決が言い渡されて幕を閉じました。
自分の命が危険にさらされるとしても、トラを守るため行動したキャロル氏の活動は尊敬に値します。
残念なことに、動物をただのお金儲けの道具としてしか見ていない人は、いつの時代も一定数います。
このタイガーキングのように動物を虐待しているのに、そこから収入を得ている人に知ないうちに協力しないように、私たちはもっと物事の背景を考える必要があるのかもしれません。
3. 「7m下」から助けを求める声
小さな子猫が必至で泣いて助けを求めたのは、なんと7mも深さがある穴の中から。
ロサンゼルスの動物レスキュー隊「Specialized Mobile Animal Rescue Team(SMART)」が行った、決死の黒猫救出劇を振り返りましょう。
前日、地質学者が空けた細くて深い穴に、運悪く落ちてしまったこのちいさな黒猫。
縦に長く口を開けた穴は、とても人が入れる大きさではありません。
救助対象のもとに駆け付けた隊員二人は、まず赤外線カメラを先端に取り付けた長い棒を穴の中に差し入れ、子ネコを探します。
しっかりと猫の姿を捕らえた彼らは、パイプの先端に輪のケーブルを取り付け、即席救出道具をこしらえ、見事子猫を吊り上げ穴から救い出すことに成功しました!
無事に救助された子猫は、アニマルシェルターで手厚く保護され、一週間後にはとある飼い主にもらわれていくという素晴らしいハッピーエンドを迎えました!
穴に落ちてしまったことは災難でしたが、温かい人々に出会いピンチを乗り越えられた子猫のシンデレラストーリーとなりました。
4. 電光石火の救出チーム
ケニアのツァボ・イースト国立公園でもレスキュー隊が出動しました。
救助者は人口水飲み場にはまってしまった赤ちゃんゾウ。
人口水飲み場というのは、観光客が宿泊するロッジから野生動物が観察できるように作られた浅い水場のこと。深さはそれほど深くありませんが、この赤ちゃんゾウは生後間もないため、どうすれば抜け出せるのかわからず、立ち往生してしまいました。
隣にはお母さんゾウが赤ちゃんゾウを心配して、寄りそっています。
しかしこのお母さんゾウも、まだ若く経験がないため子供の助け方がわからずイライラして気が荒くなっています。
そこで人工の水飲み穴にはまった赤ちゃんゾウのもとへ、デビッド・シェルドリック野生動物トラストのレスキューチームが駆けつけました。
レスキューチームはヘリコプターでゾウの近くに降り立ち、お母さんゾウがびっくりして逃げ出した一瞬の間に4人がかりで、赤ちゃんゾウを水飲み場から助け出しました。
まさに電光石火の救出劇!
野生のゾウはとても凶暴で人を殺すこともあるため、まさに命がけの、そして早業の見事な救出劇となりました。
助けられた赤ちゃんゾウが健やかに大きく育ってくれたら、レスキュー隊の方々も報われることでしょう。
5. 絶滅危機動物を救え!
もう一度冒頭にも出てきたインドネシアに目を向けてみましょう。
インドネシアのボルネオ島で、絶滅の危機に瀕しているスマトラサイが落とし穴式の罠に入ってしまいました。
またも密猟者の仕業!?というわけではなく、仕掛けたのは「スマトラサイ・レスキュー・アライアンス」という国際的な保護組織の連合体のもので、スマトラサイを絶滅から救うことが目的でした。
スマトラサイは、サイの中でも最も小さく深刻な絶滅の危機に瀕している動物とされており、現在、生息数は300頭以下と推定されます。
保護されたサイが住んでいたボルネオ島には、約10頭ほどしか残されていないそうで、確かに保護活動は急務と言えます。
しかしこのスマトラサイの保護活動は、言葉ほど簡単ではありませんでした。
というのも、スマトラサイが保護されたのは人里離れた鉱山の奥地。サイの保護施設まで約150キロ離れた場所まで輸送しなければならないのです。
さらに問題は距離だけではありません。運搬用のトラックが通れるようにブルトーザーも出動しました。
雨によって流されてきた、路上のゴミを撤去するためです。加えて、興味を持った野次馬から妨害されないように警察も同行しました。
絶滅寸前のサイを輸送する一大プロジェクトです!
輸送に一番大切なのは、サイが安全にそして快適に過ごせるようにすることです。
これにも三カ国の獣医師が連携し、体調管理も注意され使われる鎮痛剤の量も的確に投与されました。
多方面での連携の結果、このスマトラサイは無事に長旅を乗り切ることができました!
パフと名付けられたスマトラサイは、健康状態も良好で穏やかに保護施設で生活しています。
6. 誰だってヒーローになれる
レスキュー隊と聞くと、精鋭部隊。プロ中のプロというイメージがありますか?
しかしそんなことはありません。誰でもアニマルレスキュー隊員になれることができるのです!
インドで村人たちが動物救助の専門家と協力し、一匹のヒョウを井戸から救い出した事例があります。
チームを率いたのはNPO動物愛護団体「ワイルドライフSOS」。
これまで何頭ものヒョウの命を救ってきました。
今回も18メートルの深い井戸に落ちてしまったヒョウがいる、という連絡を受けて急行した彼らは、ロープ一本に縋りつくヒョウを見つけました。
すぐに彼らは木の枝を束ねてロープで吊り下げ、しっかり固定し足場を作り上げました。
そこでひとまず、溺れてしまいそうだったヒョウを水の中から救い出すことに成功します。
続いて入口のついた鉄製の箱を村人総出で慎重に吊り下げていきます。自らヒョウが飛び込んでくれるようにするためです。
この大胆かつシンプルな方法のおかげで、ヒョウは見事保護されました。その後の健康状態も良好ということです。
この救出劇が成功したのは、村人の迅速な通報と協力があったからこそのものです。
特別な経験や知識がなくても、動物を救いたい!何とかしたい!という気持ちで救える命はたくさんあります。
7. レスキュー隊員は2頭のカバ!?
自然界は弱肉強食、無慈悲で無残なことがたくさんあります。それが自然のサイクルであり、摂理です。
とはいえ、運よく捕食者から身を逃れた一頭のヌーがいました。
そのヌーを鋭いワニの歯から救い出したのは、なんと二頭のカバ。
優雅に水飲みそしていたヌーの足に、突然ワニの強力なあごが噛みつきました!
必死に逃げるヌー。貴重な獲物を放してなるものかと、あきらめないワニ。
その対決を制したのは、体力勝負で勝ったワニ・・・であるかに見えました。
しかし形勢は突如として逆転します。
そこへやってきた二頭のカバが、ワニへと突進しヌーを解放させたのです!
動物が動物を救うこのドラマチックなニュースですが、とはいえ専門家の意見は大変現実的で理にかなっています。
「何であれ水に入って来ようとする者を、カバは激しく攻撃するというのが私のいちばんの推測です。カバは突進して、邪魔者を追い払おうとするのです」
そう話すのは米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の教授、ダグラス・マコーリー氏。
というわけで、おそらくカバは自分の縄張りを主張するためにワニに攻撃し、その結果ヌーは助かったようです。
奇しくもワニの今日のご飯にならなくて済んだヌー。
偶然とはいえ、このカバ二頭はヌーにとってはアニマルレスキュー隊の役割を果たしました。
さいごに
世界の様々なところで、動物たちは助けを求めています。
災害から、人災から、事故から。動物への愛によって急行し、困難があっても助け出す人々に心からの賛辞を贈りたいと思います。
そして彼らから、命について私たちは考えさせられます。
人間一人一人の手は小さく、できることには限界があります。それでも、自分の手のひらに抱えられるだけの努力を払うなら、一匹でも多くの命を救えるかもしれません。
耳を澄ませて、聞いてみませんか?あなたのそばから聞こえてくる動物のSOSを。
- 野生のゾウの密猟はなぜ起こる?7章でわかりやすく解説 - 2021年2月2日
- 【熊なの蜂なの?】ハチクマという鳥がもっと注目されるべき理由7選 - 2020年10月1日
- 【90度の断崖絶壁で…?】ヤギのすごい生態&人間との意外な関係を7つの点で紐解く - 2020年8月25日