ヒマラヤの蜂蜜とり、その伝統に迫る
ネパール、ヒマラヤの麓に住む山岳民族グルンの人々。彼らが何世紀にも渡って続けている伝統的な“蜂蜜とり”に迫ります!
source & images: The ancient art of honey hunting in Nepal – in pictures
グルンの人々が行う「伝統的な蜂蜜とり」と言いましたが、現在では、この伝統が失われつつあります。その原因の一つは、この地の商業化です。観光客が入り始め、蜂蜜とりは、「体験アクティビティ」のひとつへと・・・。
しかし、まだ、伝統が消えてなくなった訳ではありません。グルンの人々が行う蜂蜜とりを写真とともに見てみましょう。伝統と観光の共存を強く考えさせられるひと時になるはずです。
蜂蜜とりに使うのは、ロープの梯子と木の棒、そしてカゴだけ。これらを器用に使い、蜂の巣を取ります。蜂の巣があるのはヒマラヤ山麓の崖です。蜂は外的から身を守るために険しい崖に巣をつくります。さらに、直射日光を避けるために、南西に限られています。グルンの人々はこのような危険な場所で命がけで蜂蜜とりを行っているのです。
蜂蜜とりの前には、儀式を行います。羊、花、果物、米を神様に差し出し、無事に蜂蜜とりが行えるように祈りを捧げます。ここにある写真の全ては秋に撮影されました。本来なら春のおわりから夏にかけて行われるものですが、気候の変化に対応して、蜂蜜とりの時期も変えざるを得ません。
ネパールのこの地域でとられた蜂蜜は、感染症や傷に効果を発揮し、医療用として日本や中国、韓国に輸出されています。春の時期にとれる最も上質な蜂蜜だと、1kgあたり1,500円ほどになります。現地の人々にとって、かなりの額です。このような“うまみ”を背景に、蜂蜜がとれる崖の所有権は、土着の人々から政府へと移ってしまいます。加えて、蜂蜜とりがあまりにも危険であることから、若者が意欲を持つのが難しくなっているのが現状です。蜂蜜とりの伝統が、ますます存続の危機に陥っています。
60m上空で蜂の巣の切り取りを行う仲間を見守るグルンの男性。世界中で高まるトレッキング熱は、ここネパールでも例外ではありません。特にガンドラック(Ghandruk)などでは、旅行代理店が「体験型の蜂蜜とり」を提供しています。参加費は日本円で、2万~15万円にもなります。にもかかわらず、この中から地元の住民に支払われるのはほんのわずか。それでも「体験型の蜂蜜とり」が無くならない理由・・・。それは、このアクティビティを手伝う地元民です。彼らは、一時的な報酬に目がくらんで付き添い観光客を指導します。それと同時に、どんどんと崖が傷つき、蜂蜜の量は減っています。
梯子を降りるその足には、「蜂蜜とりの伝統」を物語る血や水ぶくれ、それに蜂の針。
とられた蜂蜜は、グルンの人々の間で分けられます。その一番最初は、一杯の蜂蜜ティー。
写真の撮影者がここに来た時、どうやってその場所を知ったのか、現地の人々にしつこく聞かれたそうです。彼らは、自分たちの大事な崖の存在が公に知れて、観光客や外からの人に荒らされてしまう事を、強く心配しています。
蜂蜜とりから持ち帰られた蜂の巣の量は約20kg。一番美味しい蜂蜜の食べ方を知っているのは、グルンの人々です。
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