アメリカ、カンザス州、オーバーランドパークという町の森に、ある時、どこからか、謎の妖精の家が現れました。地元のニュースでは「ノーム(大地の妖精)の家が、出現。誰がつくったのかはわかっていません」と報道されました。
なぜ、森の中に、可愛らしいノームの家が出現したのでしょうか?一体誰が?今回は、そんな謎でありながら、地元の人々に愛される小さな世界に迫ります。
Useful source: Kansas Gnome Homes
ノームの家「ファイアフライ・フォレスト」
この場所には、実はちゃんとした名前があります。その名も「ファイアフライ・フォレスト(Firefly Forest)」。「ホタルの森」という意味です。
なぜそう言われているのかは、わかりませんが、ちゃんと、その名前を示す看板が立てられています。これを立てた人は、きっと、ノームの家を実際につくった人物でしょう(これについては、後ほど詳しく)。
▼ 森の木に扉をつけて、見事に妖精の家が作られています。郵便受けまであり、ものすごい完成度です。
▼ 一つだけではありません。複数の家があり、まさに、ノームたちの住む森です。
地元の人に大人気
▼ なにやら可愛いお家が出現したらしいぞ、ということで、地元の人の間で話題に。お散歩道に、突如、こんな粋で可愛らしいものが現れたら、思わず、立ち止まって写真を撮ってしまいますね。
▼ 子供なんか、特に大喜びです。これだけで、日々の散歩が一気にパッと明るくなりそう。下の画像にあるように、ここには、妖精宛ての手紙を残せるようになっています。なんとも素敵なシステム。
▼ このように、クリップで手紙や、ちょっとした一言をとめることができます。そして、たくさんのメモや手紙の中に、ある女性(ケリーさん)からのものがありました。
彼女は、幼い娘(アリーちゃん)を3才にして脳のガンで失っていました。そして、その娘を追悼する言葉を、紙に書いたのでした。娘との楽しい日々を思い描きながら、書いたことでしょう。

そして…その思いが「妖精」に届きました。正確には…このノームの家の作者です。
▼ こちらが、ノームの家をつくった人です。そう、一人ではありません。こちらの家族です。お母さんである、下の画像の女性が、離婚という辛い時期を乗り越えようと頑張る息子二人のために、考案したアイデアでした。
彼女によると、最初は、息子たちのために始めたことだそうです。しかし、これに没頭する中で、周りの人から、素敵な反応があり、自然と「皆を笑顔にできるなら、もっと作ろう」と続けたとのこと。
▼ 美しき、母と子の絆。子供達も真剣に、工作(…の域を越える完成度ですが)にのめり込んでいます。
ここで、先ほどの、幼い我が子を失った女性ケリーさんからのメッセージについてです。それを、ノームの家の作者が読み「なんてこと、この人は、子供を失ってしまったの。この子のために、一つ扉を作ろう」と決心。
▼ こちらが、アリーちゃんのために作られた扉。お互いに、顔も知らない。直接話したこともない。それでも、このノームの家を通して、「この人のために、私ができることがあれば」という気持ちで、素敵な心がつながりました。

▼ この扉を見た、アリーちゃんのお母さん(そして、アリーちゃんのおばあちゃんも)。

素敵すぎますね。コミュニティとして非常に愛の溢れる場所であることが伝わってきます。妖精の家が突如現れて、それを憩いの場として、人々がつながり、知らない人に、大事な友や家族のような優しさを見せる。
ちなみに、なぜ「フクロウ」があしらわれているかというと、アリーちゃんは、なかなか寝付かない子で、お母さんとお父さんで「アウル(owl)」というニックネームをつけていたから。その愛称を、手紙に書いていたのでした。
ノームの家の後日談
本当は、これで終わりたいところなのですが、最後に悲しいお知らせもあります。なんと、このノームの家の作者である家族は、家庭の事情により、カンザス州を離れ、ユタ州へと引っ越すことに。
子供達は、この地で新しい友達をつくったばかりとのことで、かわいそうとしか言いようがありません。さらに、 町の方針により、ノームの家は撤去しなければならないことに。
ノームの家の回収は、夜中に行われました。ちなみに、もともとの設置も(他の人の目につかないように、いきなり妖精によって作られたかのように)夜に、この家族により行われていました。
▼ そして、撤去後に、こんなメッセージ(複数あるうちの一つ)が残されました。

ネット上では「平和な人たちのために、可愛い飾りを作るだけで、何が問題なのか」、「撤去をしなければならないのは、流石にひどすぎる」という嘆きの声があがっています。
ただ、二人の子供たちにとっては、母親からの深い愛、地域の人とのつながり、人に感謝されることの素晴らしさ、を学ぶ最高の経験になったのではないでしょうか。
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