アメリカはユタ州にある、1970年に泥、塩、水晶、玄武石、土で作られた「スパイラル・ジェティ(Spiral Jetty)(*「jetty」とは「桟橋」や「埠頭」の意味)」は長さ457mでグレートソルト湖(大塩湖とも)に大きく突き出しています。

Useful source: Spiral Jetty, Dia:
実は30年も人目につかず眠っていた
こんなに存在感のある作品ですが、実は、30年間も誰の目にも止まりませんでした。というのも干ばつの時にロバート・スミッソンさん(Robert Smithson)により作成され、その後、水位が元に戻るとこのアートは30年間も水中に沈んでいたのです。そして、2004年の干ばつの時に再び姿を表しました。

また姿を消してしまうのか?
湖の水位が1,279m以上になると作品は水没してしまうのですが、現在まさに再び消えてしまう危機に晒されています。
ジェティの復元計画もありますが、誰もが賛同しているわけではありません。いや、決して、作品を嫌う人がいるわけではありません。むしろ、反対です。
復元反対の真意とは?
その理由というのがこちら。作者は、作品を完成させたわずか3年後に飛行機の墜落事故で亡くなっていますが、彼が愛したのはエントロピーと自然による浸食作用でした。このプロジェクトはそもそも、「ランドアート」と呼ばれる60年代の彫刻のムーブメントの一部でもあります。
この言葉について説明をしようとすると、途方もない長さになってしまいます。ここでは「無秩序」という意味でご理解ください。彼は「乱雑で不規則である状態」を愛したということです。
自然にある土や木といったものを使った作るアートです。普通、野原などのひらけた場所に作られます。芸術の中の1つの潮流として知られています。ナスカの地上絵、ピラミッドは、この定義によると、古代のランドアートに分類されます。
自然の移り変わりを体現したアート
きっとロバート・スミッソンさんはその代表作である「スパイラル・ジェティ」が消えて、自然の移り変わりを表していくことを喜んだことでしょう。
崩れていく外観や変動する水位、塩分を含む水などのすべてが、アーティストが表現したいエントロピーというコンセプトを物語ります。スミッソンさんはアート作品を、完成した瞬間から衰退していき、決して一定の形を保つことのない、常に変化を続けるものと捉えました。
変わらないものなど何もない
仏教の諸行無常の考えに似ていますが、考えれてみれば、世の中に変わらないものなど何一つありません。そんな当たり前のことに目を向け、その変化を愛でる機会をくれるのが、この「スパイラル・ジェティ」です。
いつ消失するかわからない。こうしている今にも、無くなっているかもしれない。そんな思いから、今すぐにでも旅に出たくなるものです。
おまけ:ジェティ(jetty)と言えば…
旅人であれば、海外旅行先のどこかで、「ジェティ(jetty)」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。移動手段のメインが車ではなくボートである国では、頻発する単語です。例を挙げるならば、モルディブです。
モルディブでは、島から島へ、アトール(環礁)からアトールへとボート(またはセスナ機)で移動します。この国の旅行をすれば、ほぼ間違いなく、一度は、「〇〇のジェティ(この文脈では船着き場)からボートに乗って…」という指示を受けることになるはず。完全に蛇足ですが…そういうことです。知るって楽しい!
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