モロッコでは優しすぎると損をする?“強気が勝つ国”モロッコ?

 

強気とお人好しをモロッコで考える
カサブランカにある、某ランドリーサービスのお店

 

モロッコでのある一日。こんなことを考えました。「モロッコでは、お人好しは損をするのではないか」と。本当は、そんなことは思いたくはありません。私は、“性格の良い人こそが結果的に幸せな人生を送ると信じたい派”の人間だからです。しかし、確信は持てません。それでは、モロッコでのある出来事をご紹介します。

 

最初に、「怒りとかそういう感情はない」ということをご理解ください。あくまでも、冷静に、モロッコ人の気質や、モロッコで生き抜くための知恵を考えています!むしろ、このような考察はとっても楽しいとしか言いようがありません。

 

友人が洋服の洗濯を業者に依頼しました。ランドリーサービスをしてくれるお店です。日本で言うところのクリーニング店よりも、もっと日常的に利用する場所だとお考えください。洗ってもらった服を取りに行ったところ…預けたはずの服の枚数が足りませんでした。そこで友人は、困ったものの、「店の人が可哀想なので」という理由で、「まあ、仕方ないか」と諦めました。

 

一方で、そこに一緒に来ていた兄は、怒りをぶちまけました。「なんで、足りないんだ!あなたたちのミスでしょう。何とかしてください」と。この二人の違いから、色々と考えました。もし、友人があきらめていたら、そのまま服は無くなったままでしょう。(モロッコの人全体をまとめて考えるのはよくありませんが)この国では…そのような状況では、そのまま服は帰ってこないと考えるのが筋です。

 

しかし、兄がいたことで、友人は、服を取り戻す機会を手に入れました。というのも、しっかりと主張したおかげで、店の人は重い腰をあげて、無くなった洋服について調べ始めたのです。そもそも、大声で怒鳴らない限り、探そうとしないのは…どうかと思いますね。

 

もちろん、この例が、全ての店に当てはまる訳ではありません。しかし、似たようなパターンは、幾度となく見てきました。店で問題が発生→店側は誤りを認めない→客が怒鳴る または 大声で主張する→やっと、店が謝罪し始める…という流れです。

 

日本とは正反対ではないでしょうか。日本では、むしろ、謝罪しすぎですね。丁寧な対応という意味では、ありがたいことなのですが、“やり過ぎ”だと感じることも、多々あるものです。このような意味で、日本とモロッコを行き来すると、その違いにより、一瞬、自分の調節がうまくいかないこともあります。スイッチが必要なのです。“大声で主張するモード”と“穏便に済まそうモード”のスイッチが。

 

そんな訳で、私は、日本に移動するたび、そしてモロッコに移動するたびに、例のスイッチをカチッと切り替えます。

 

そして今思うのは…「自分がもし、モロッコでも“穏便に済まそうモード”のままだったら、どうなるのだろうか」です。きっと、色々と、損をするでしょう。レストランで頼んだものと違う料理が来た時、それを替えてもらうだけでも、日本にいる時の2倍以上のエネルギーを使います。お人好しすぎると、この国では、相手すらしてもらえない“時がある”のです。

 

ただし、忘れてはいけないことがあります。それは…この“大声で主張するモード”は、あくまでも何か問題が起きた時に活躍するという事実。なので、普段はお人好しであることのメリットは存在するでしょう。

 

私なりの結論はこうです。普段は優しく人に接しつつも、何か問題や不都合があった時には、声を大にして主張できる人。そんな人が、モロッコでは一番得をするのではないでしょうか。最低でも、そのような人は、モロッコでは“生きやすい”はずです。

 

まだ、思うことはあります。このように、“主張する方が得をするのだ”という、ふわっとした風潮というか意識みたいなものがモロッコ全体に広がっていると仮定しましょう。すると、親は子に“強く生きなさい”という話の流れの中で、“主張をすること”の意味を教え込むかもしれません。そのループが続くと、必然的に、国民のほとんどが、主張し合うことになります。そんな国に、日本人(よく言えば、奥ゆかしく…悪く言えば、意見の主張が苦手な国民)が舞い降りると…うまく主張を言葉にできず(言語の壁ももちろんありますが)、色々と“議論で負ける”のかもしれません。

 

こんなことを、私は今…カフェで考え、書いています。ちょうど今、隣の席に座った男性が、私のカバンの置いてある椅子を、何の躊躇もなく(もちろん断りを入れることなく)ドンと押し、自分のスペースを確保したところです…(タイムリーな一発を、ありがとう!)。面白いものですね。日本とは、丸っきり、マナーの基準が違いますからね。日本の価値観をここで押し付けても仕方がないので、私がただ、モロッコにおける基準を学び、考え、皆さんにお伝えするのみです!

 

そう考えると…私の言う“モロッコで損をしないための強気”は、あくまでも、「日本人の考える強気」であって、モロッコ人にとっては、至極真っ当なことなのかもしれません。今度、時間を確保して、いろんなモロッコ人に意識調査をしてみたいものです。

 

これからモロッコ旅行をされる方は、もし「このモロッコ人、やけに強気だな」と思っても、まずは「そうか、モロッコではこれが普通なのかもしれない。生きる知恵を垣間見たっ!」と考えるようにしてみてください。これだけで、かなり、気持ちが楽になるはずですよ。

 

ここまでの結論は、“日本人の一般的に持つ基準よりも強気にならないと、モロッコでは損をしがち”ですよ、ということです。しかし、私はまだある希望を捨ててはいません。もしかしたら、怒鳴ったり、大声を出したりしなくても、うまくやっていける方法が…モロッコにもあるのではないかと。淡い期待かもしれませんが、探求は続けていきたいと思います。

 

実際、穏やかで優しくて、そしていい感じの日々を過ごしていそうなモロッコ人は、私の知り合いにはいっぱいいます。そのような人は、もしかしたら、トラブルに巻き込まれた時に主張を通すことは苦手かもしれませんが、ストレスのない生活を楽しみ…全体としては、より有意義な人生を送っているのかもしれません。この辺についても、もっと深く考えてみたいものです。“普段は穏やかに過ごし、ここぞと言う時にしっかりと主張できる”ハイブリッド型モロッコ人が、理想なのですかね。例えば、満面の笑みで、主張を通すとかは、どうでしょうか。…逆に怖いですね。

 

モロッコを制するのは、“穏やかさ”と“主張できる強い芯(+大声)”を備えたハイブリッド型モロッコ人なのかもしれない クリックでつぶやく

 

そして最後に、一点追加しておきます。私のこのような考えは、8-9割、モロッコの中でもカサブランカでの経験に基づいているので、ラバト、エッサウィラ、シェフシャウエンなどの他の場所では、必ずしも同じことは言えません。最近、モロッコでの拠点を一時的に、モハメディア(Mohammedia:カサブランカから電車で30分ほどの海辺の町)に移したのですが、カサブランカとは比べ物にならない、平和な雰囲気と穏やかな人々に、一種の(もちろんいい意味での)衝撃を受けています!

 

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