4章で知るファティマの手！ファティマの手の意味とは？（ハムサ/ミリアムの手）

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ファティマの手といえば、「手に目がくっついたようなデザイン」のことを意味します。

これは、モロッコ、そして中東、北アフリカを中心として広く知られる重要な存在です。

今回はそのファティマの手の意味について、詳しくご紹介します！

Useful links: Kashgar, Wikipedia,

ファティマの手の本当の意味とは？

モロッコに住んでいると何かとファティマの手と接することがあります。

そんな縁あって、自身の生活体験にあわせて、詳しく調べましたのでご覧下さい。

ファティマの手の意味とは（スーパーで焼き菓子を発見） — 「ファティマの手」のデザインの焼き菓子づくりキットをスーパーで発見

▲上の画像をご覧ください。先日、スーパーマーケットCarrefeurで買い物をしていると、こんな「ファティマの手」デザインの商品を見つけました。このように、ファティマの手をモチーフにした食べ物に出会うことはなかなかないので、写真を撮っておきました。

1. ファティマの手は日本で言う“お守り”？

まずは基本的な知識からです。ファティマの手とは何なのでしょうか？簡単に言えば、お守りのようなものです。右手の手のひらの真ん中に目がついたデザインですね。中東やアフリカ北部の各国で、イスラム教徒、ベルベル人の間に広く知られるものです。

補足

＊異なる文化により、目以外のものが描かれることもあります）

＊ベルベル人＝アルジェリア、モロッコを中心として生活する民族：詳しくはコチラ→【9割の日本人が誤解？】「ベルベル人」と「ベルベル語」とは？）

その効果は、「邪視」という睨みつけられることでかけられる呪いを追い払ってくれるというものです。「ファティマの手」のデザインは、よく、壁にかける装飾や、宝石の中に取り入れられます。これはモロッコで始まったものとされています。

さらにマラケシュなどの観光地ではお土産のキーホルダーなどとして、多く目にすることができます。ちなみにファティマの手はハムサとも呼ばれます。「ハムサ」という言葉はアラビア語で「5」、「5本指」を意味します（アラビア方言であるモロッコ語でも同じです）。

ちなみに私がモロッコの大都市カサブランカの、あるマンション（おそらく私以外の住人は全てモロッコ人）に住んでいた時には、お隣さんの扉に木製のファティマの手がかけられていました。

家のドアにファティマの手をつけることの意味

私の感覚ですが、お隣さんの家のドアにファティマの手があると…余計に気をつけるようになります。というのも、これをつけているということは「熱心なイスラム教徒である可能性」を大いに示唆しているからです。いい・悪いの話ではなく、なんだか、背筋が伸びます。少なくとも、そんな人に対して、（宗教的に）失礼にならないようにしよう、という意識ですね。このような意味で、ファティマの手がある意味で「宗教に対して熱心、真面目である」ことの一つの印になることもあるかもしれません。

2. ファティマの手はどこからやってきたの？

ファティマの手の起源 — 細かな補足：ちなみにこの地図には「西サハラ」という記述がありますが…モロッコ的には、完全にモロッコの領土

ファティマの手（ハムサ）の登場はメソポタミア文明や古代カルタゴにまで遡ります。それだけ歴史の深い概念なのですね。この時から、ファティマの手（ハムサ）には聖なる加護の力が宿ると信じられていたようです。歴史的には、黒玉に削り込まれたり、銀から形成することでつくられていました。

これは、鉄が純潔性の象徴であり、それゆえに魔法の力を持つと信じられていたことと関係しています。ファティマの手（ハムサ）は赤く塗り（時に生贄の動物の血を使用）、家の壁にかけたり、または、妊娠している人が住む部屋や新生児のための部屋の入り口にかける使い方もされます。

補足

古代カルタゴのフェニキア人は、カルタゴの都市を守護する女神タニット（Tanit）を象徴する意味で、「手」の形を使い始めました。その後、セファルディム（中世にイベリア半島〈スペイン、ポルトガル〉に居住していたユダヤ人の子孫）の間に広まっています。

3. なぜ“ファティマの手”という名前なの？

預言者ムハンマド（イスラム教の神であるアッラーは描写することが許されていませんが、この預言者ムハンマドはあくまでも人間なので問題ありません）（Image: Huffpost）

「ハムサ」であれば、「5本指」なので、見た目そのものとのつながりが感じられるでしょう。でもなぜ、「ファティマの手」という呼び方もされているのでしょうか？これは、イスラム教に関係しています。イスラム教において、最後の預言者となったのはムハンマドです。イスラム教の開祖として有名ですね。このムハンマドの娘の一人の名前が、ファティマであり、ここから「ファティマの手」という名前がつけられました。

モロッコにはファティマという名前がいっぱい？

モロッコ旅行中に、モロッコ人の友達ができるかもしれません。そして、挨拶をすると「ファティマです」なんてことも、あるでしょう。そうです、ファティマというのは、モロッコでは、ありふれた女性の名前です。実は、男性か女性かを問わず、モロッコの人の名前は、かなり限定的で、同じ名前の人がたくさん。ほとんどが、イスラム教の重要な人物（預言者など）や、アラビア語で素敵な意味を持つ言葉に関連しています。例えば、今までモロッコで出会ったモハメッド（預言者ムハンマドに由来）の数は、もう覚えていません。

宗教として見ると、ファティマの手（ハムサ）の効果を強く信じる人々はイスラム教徒やベルベル人だけではありません。多くのユダヤ教徒の間でも、広く受け入れられています。そして、ご想像の通り、ユダヤ教においては、また違う名前が存在します。それが、「ミリアムの手」です。これはモーセとアロンの姉、ミリアムに由来しています。

4. こんなところにもファティマの手が！

モロッコのすぐ東となりに位置する国がアルジェリアです。このアルジェリアの国章には、なんとファティマの手が描かれています。これは、アルジェリアにおける、イスラム教、ベルベル人の存在の大きさを表したものです。このように、一国や、その文化、歴史を象徴する大事なアイデンティティーとしての役割も果たしているのですね。

アルジェリアとモロッコの関係…

実は、お隣さん同士なのに（いや、むしろ、隣国だからこその問題で）モロッコとアルジェリアは仲違いをしています。そんな理由から、モロッコ-アルジェリアの国境は閉鎖されており、陸路で移動することはできません。ですので、どうしても、モロッコ、アルジェリア周遊をしたいという人は、飛行機を使用することになります。

ファティマの手には歴史と意味が詰まっていた

どうでしょうか？ファティマの手に込められた歴史や意味を感じて頂けたでしょうか？よく「ファティマの手のペンダントをお土産としてもらった！だけど…それに込められた意味が分からない…」という人がいます。

この記事を通して、その深い意味を理解して頂けたら嬉しいです。ファティマには純粋かつ敬虔な（割と本格的な）意味が。その一方で、最近のモロッコの観光ブームで、よりポップなデザインも見られるようになりました。歴史や宗教と、モダンなデザインの融合ですね。

モロッコ人がファティマの手に抱くイメージ

さらに、もう一歩踏み込んで、モロッコ人が漠然と抱くイメージもご紹介します。先ほど、家のドアに貼り付けている例をご紹介しました。ちなみに、そこに住んでいたのは、50-60際と思われるおじさんです。

聞き込みをしてみた結果

ここで私の中に、こんな仮説が浮かびました。ファティマの手は「年上世代」に人気なのかもしれない。そして、周りの老若男女のモロッコ人に聞き込みをしてみました。その結果として、一番多かった意見がこちら。

もちろん知っているし、それがお守りであることも理解している（モロッコ人なら当たり前）。ただ、それを持ったり、飾ったりすることをしようとは思わないし、考えたこともない。

若者の考えるファティマの手

聞き込みを行なった相手の大半が、20-30代です。若者世代からすると、圧倒的に「クールでモダンなイメージ」はないようです。より保守的で、おじいちゃん・おばあちゃんの家にありそうなイメージとのこと。

50-60代にも聞きましたが、その中でも、どれだけイスラム教に対して熱心であるかが、分かれ目のようです。以上の簡単な調査からは、このようなことが言えます。ファティマの手は、若者向けのおしゃれデザインというよりも、カタい宗教的な意味を持つもの。年上世代の方が、生活の一部として取り入れていることが多い傾向にある。

ですので、必ずしもファティマの手のお土産を日本に持って帰った時に「これはモロッコでは、大流行してて、皆が持ってるものなのよ！」と言いふらすのだけは、避けたいものです。モロッコの歴史や文化の一部ではありますが、流行のデザインかと言えば別物ですね。