【ニュース】アメリカがモロッコの西サハラ領有権主張を支持

 

モロッコの西サハラ領有権がアメリカに承認された

 

今回のテーマは西サハラです。非常に複雑なテーマですので、この記事だけで全てを網羅することなど到底できません。西サハラについては治安という点について、以前に記事を書いていますが、今回のテーマは「西サハラが世界的に認められるのか…」という話題です。

 

アメリカが「モロッコによる西サハラ領有権」を承認

 

現在、2020年12月19日に記事を書いていますが、ちょうど先日、カサブランカのホテル（新しいお家探しの際に一時的に滞在）にいたところ、テレビのニュースで大きな動きがありました。なんと、アメリカが「モロッコによる西サハラ領有権」を承認したのです。

 

アメリカが「OK！」といったところでそれが国際社会での法的拘束力を持つわけではありませんが、これだけの大国からのお墨付きをもらったということで、大きな意味があります。

 

Al Jazeeraには以下のようにあります。

 

In a presidential proclamation on Thursday, the United States recognised “Moroccan sovereignty over the entire Western Sahara territory” and reaffirmed its support for a Moroccan proposal to grant limited autonomy to Sahrawis under overarching Moroccan control.

 

（こちらは私個人による日本語訳：木曜日の大統領（トランプ氏）宣言で、米国は「西サハラ領土全体に対するモロッコの主権」を認め、包括的なモロッコの支配下にあるサハラ・アラブ民主共和国人に限定的な自治権を与える、というモロッコの提案に対する支持を再確認するかたちとなった）

 

これはモロッコにとって、非常に大きな一歩です。モロッコ人にとしては、当たり前のように西サハラは完全に自分の国の一部、とされています（実際に私がモーリタニアから西サハラ…という旅をした時にも、実質的に、そこを支配しているのはモロッコでした）。センシティブな話題ですので、モロッコ人に対して簡単に話すのはおすすめしませんが、知っておくことは大事です。

 

現段階では、世界的には、西サハラはモロッコの一部ではない、というのが大方の意見です。かといって、はっきりと「モロッコか、それとも、サハラ・アラブ民主共和国、どちらを指示するのか」明確にしていない国も多くあります。

 

武装政治組織とされるポリサリオ戦線は、今回のアメリカの声明に対し、「国連憲章の露骨な違反」だと抗議しています。このような背景を踏まえた上で、ニュースからはわからない「モロッコの今」についても、考えてみましょう。

 

モロッコではどんな風潮が見られるのか

 

ここからが、モロッコにいるからこそ感じる、非常に興味深い風潮です。今回のニュースを受けて、モロッコでは「このチャンスをものにして、一気に西サハラの所有権を確実のものにするぞ！」という意識が爆発しています。

 

実際に行き交う人々がこれを熱弁しているのかと言えば…少なくとも、カサブランカでの生活をしている限り、そんなことはありません。ただテレビの番組を通じた「鉄は熱いうちに打て」の方針が、はっきりと確認できます。

 

西サハラ番組があからさまに急増

 

アメリカによるモロッコ支持の後、いきなり、西サハラ地域を特集する番組が集中的に放送されるようになりました。決して「西サハラは私たちのものだ」という内容ではないのですが、例えば、そこに暮らす人々の生活を放送するなどして、まざまざと「モロッコの一部である、この地域では」という文脈をつくりだしています。

 

モロッコ政府としては、有無を言わせずに、このまま実質的な「支配してます」という事実を前面に押し出していきたいのでしょう。

 

大使館と総領事を建てまくる作戦

 

モロッコは急ピッチで西サハラでのプレゼンス強化に乗り出しています。その最たる例が大使館/総領事建築ラッシュです。ここに、いろんな国の大使館をつくることで「もう、大使館もあることですし」というパワープレーをしようとしているのですね。アメリカは、ダフラに領事館を設置するとのことです。DRC（コンゴ民主共和国）もこれに続きます。

 

さいごに

 

ここぞとばかりに、モロッコは西サハラを完全に取り込もうとしています。いや、実際に支配しているのはモロッコなので、それに違いはないのですが、より「各国からの承認」につながるであろう既成事実を固めることに全力を投じています。

 

これからのモロッコの動きには注目したいものです。

 

Shunya Ohira
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